柳生会設立趣旨

 柳生会は昭和三十年に第二十世宗家柳生厳長師範により設立されました。尾張藩以来の道場は戦災により焼失してしまいましたが、厳然たる流儀の正伝は今日まで続いています。

 現在は、名古屋を中心に東京、大阪等数カ所で定例の稽古がおこなわれており、兵法だけでなく、柳生制剛流抜刀および講道(口伝書の解説等)も柳生宗家直伝の指南が有ります。

<柳生会設立趣旨>
創業垂統の一語は人生に於ける貴重な言葉である。業を創めることがすでに受けることより遥かに難しいが、之を伝(垂)へて長くその統を維持することは更に難しい。それには普通人の意外とする所の精神性・人格的努力の相伝を要する。従って高度の精神的人格的要素を含む業ほど垂統は難い。
剣道は日本民族の精神と技能とが至極の練磨によって達成した偉大な芸道である。それだけにその相伝は至難の業である。上泉信綱・柳生宗厳の相伝に成る柳生新陰流は実に日本剣道の大宗であることは言ふまでもない。
然るにそれが今日柳生厳長師範に於て正統連綿二十世に及んでをるといふことは稀世の事と言はねばならぬ。これは確かに日本の歴史的な誇の一つと言ふことが出来る。我々はこの貴い伝統の芸道を護って之を尚ほ永遠に伝へたいと念願する。是れ柳生会を設立する所以である。大方の有力な御賛成を仰望する。

安岡正篤先生恵叙 昭和三十年九月

<新陰流兵法玄旨>
一、新陰流兵法は
日本固有兵法の本源を修證し一流の妙諦を発揮するを以て本旨と為す
一、新陰流兵法は
刀法に即して心法を明らめ人々本具の性に率い人生の大事を了畢せんことを期す
一、新陰流兵法は
虚霊不昧衆理を具備し一身の兵法より之を家国天下に及ぼし
十方を全身とする人格の円成を期す

<柳生会会員学規>
一、当会は、凡そ道を尊び、祖師先哲の教を信篤し、戒定慧、三学の円成を第一の旨とする出精工夫の道場である。一流の正見、一家の公案も無く、猥りに私見を提げて葛藤を打する邪魔の徒輩を容れない。
一、この道は学人各自の天性に率い、本分了畢の道なれば、修養是れ生涯の事である。されば一旦入門の上は一念退意なく中途にして修養を放捨してはならない。たとえ、得道究達底に到らずと雖も、長養不断なるときは一生の養生、安心の術を錬得することができる。
一、兵法の秘玄は俗人の窺知を許さない。学道の士、この旨を慎戒しないときは、道を冒し自他の身を破るならん。会員は天下の広居にいる士大夫なれば、苟も世々の道に背き、武徳を冒し、当会の体面を汚すが如き言動があってはならない。
一、修行の功成り、他日向上極意の位を究明したる達道人は固より独善を放って広く弘流に力め、其道を宣揚して、祖師先哲の深恩に報い、以て奉公する所あるべし。

第二十世宗家 柳生厳長