3. 柳生新陰流の特徴

鍔「天地人転」
鍔「天地人転」

 第五世連也厳包による図案の柳生鍔に「天地人転」とあります。これは当流の神髄を示す言葉である、「性自然」、「転」、「真実の人」の3つを意味しています。

 「性自然」とは、自然の活(はたら)きに従うことで、私心なく身体全体でのびのびと刀を使うことです。心身一如、刀身一致とも表現されます。その本(もと)の考え方は、性の自然に循(したが)えば、物事に適切に対応できるということで、「本来の自己」で刀を使うことによって、どのような状況下であっても適切に対応できるという「神妙剣」に通じる考え方です。

 「転」を表す言葉が、流祖の遺した『燕飛の巻』に記載されています。「懸・待・表・裏は一隅を守らず、敵に随って転変して、一重の手段を施すこと、恰も風を見て帆を使い、兎を見て鷹を放つが如し」です。斬合いにおいては、懸かる、待つ、表から攻める、裏から攻めるの四通りの対応があります。これはどの方法にも固執せずにその状況に応じて柔軟に最適な手段を用いるという考え方を意味しています。「転」を使うには、心身ともに先入観を持たない「無形の位」を本体とし、千変万化する相手を明らかに観ることが必要とされます。敵をすくませて力尽くで敵を倒す「殺人刀」ではなく、敵を働かせその働きに随って無理なく勝つという「活人剣」に通じます。

 「真実の人」は、流祖が石舟斎に授けた一国一人印可状に記載された言葉です。それは私心のない、誠の人であることを意味します。印可状には「其の上の儀は真実之人に寄るべき候」とあります。これは斬合いの極意は「真実の人」にのみ伝えることができることを示しているのです。流祖の命を踏まえ、石舟斎は「兵法に五常(仁義礼智信)の心無き人に斬合極意伝えゆるすな」と『兵法百歌』の中に遺し、当流を学ぶ者に対して厳しい指針を与えています。

 また石舟斎は、柳生家憲の中で「一文は無文の師、他流勝つべきにあらず、昨日の我に今日は勝つべし」と述べて、当流を学ぶ者に対しての行為の指針を与えました。自分の知らない事は知っている人から謙虚に学び、他流と勝負を争わず、ひたすらに自分自身の向上に日々努めよ、と言っています。